ミックさんが牽引に使っているヘッド車は、アメリカンSUVガソリン4.2Lエンジンの「シボレー/トレイルブレイザー」です。
もともとバス釣り大好きだったんで…
念願かなってチャンピオンボートを牽引するようになったのですが、岡山近隣のフィールドでは、そのサイズとポテンシャルを持て余してしまい…昨年とうとう手放してしまいました。
今までいろんな楽しみに付き合ってくれている相棒トレイルブレイザーも、気が付けば10歳を超え走行距離も11万キロ突破。
今はまだ元気いっぱいトレキャンを引っ張ってくれていますが、いつかは体調ならぬ車調を崩すことも考えて「次期ヘッド車」候補の見当をつけておかなければなりません。
で、普通車牽引歴20年にせまるミックさんからひとこと言わせていただきたいのですが…
「キャンピングトレーラーのヘッド車」選びについては、一般に言われている事よりもシビアになったほうがいい項目があります。
“ けん引免許不要サイズ”と言われるとなんだかスゲー「お手軽感」がありますけど、実際750キロのトレーラーを牽引するのは車的には大きな負担なはずです。人間に換算すればわかりやすいですが、いつも乗っている車に家族とキャンプ道具を積み込んだうえに、75キロの大柄な大人10人が乗ったリアカーを牽いている状態を想像してみてください。けっこう重たいです(汗)
十分なブレーキ性能があるかどうか
多くのトレキャンには慣性ブレーキがついていますが、単純に車両重量がプラス750キロされるわけなんで、牽引車には相当のブレーキ性能が求められます。牽引を想定してセッティングされている場合を除いて、ノーマルのブレーキ性能ではトレキャンを制動するには頼りないと思ったほうがいいと思います。実際の運転ではかなり車間距離を取りますしブレーキングのタイミングも早めです。
オルタネーターの発電能力の高さ
これもあまりネタになってない気がしますが、電源サイト以外で家電を使う時の選択肢はほぼ2択。「トレキャンのバッテリーでAC100Vを作る」もしくは「ヘッド車のエンジンで発電してAC100Vを作る」です。
トレキャン内で使いたい家電製品トップ3に入るであろう「電子レンジ」は使用電力は500W~1000W程度。起動電力に配慮すれば1500W程の大容量インバーターを装備したいところですが、トレキャンのバッテリーを電源に使うとすぐに空になってしまいます。
そこで、ヘッド車のオルタネーターにインバーターをつないで1500Wぐらいの発電をしよう!ってなるんですが、1500Wもの大容量インバーターを安定して動かすためにはヘッド車はせめて150A程度のオルタネータを装備している必要があります。ところが国産車の多くは50A~70Aですので、容量の大きなオルタネーターへの換装が必要になります。
いまならPHEVなんかもいいかもしれません。あれ、大きな電源車ですから。慢性的な電力不足が問題のトレキャン牽きなら考えてみてもいいかもしんない。
リアサスの強度
ヒッチ荷重が軽いヨーロピアントレーラーとはいえヒッチには70キロ程度の垂直荷重がかかります。加えてラゲッジルームにも荷物満載で移動することが多いので、リアサスが弱い車だと牽引車が後ろ下がりになって前輪のグリップが弱くなったり、ヘッドライトが「常にハイビーム状態」になったりする恐れがあります。
ウェイトディストリビューションヒッチなるアイテムもありますが、ヨーロピアントレーラーで装備しているのはあまり聞きません。(アメリカントレーラーだと割と必須アイテム)リアだけ強化サスに変えるなどの必要があるかもしれません。
車体の強度について
ベターはラダーフレーム。もちろん強ければ強いほどいいんですが、いくら強くてもフレームは歪みます。裏を返せば「歪む事を前提に牽引行為をする」覚悟を持って望んでください(笑)
ミックさんのトレイルブレイザーは、新車納車時に締まりが悪かった(ピラーに干渉していた)運転席のドアが、度重なる牽引による歪みのおかげでスムーズに閉まるようになりましたwラダーフレームに乗っかっているボディーでさえ影響を受けます。現在流通している車のほとんどはモノコック構造です。牽引すればどんな事態が発生するのか…実際に牽いてみないと分かりません。
ちなみに牽引に耐えうる車体の強度があるのかはメーカーに問い合わせても明確な答えが返ってこないと思います。アメリカやヨーロッパでは牽引性能は重要項目ですから、英語やドイツ語で「車名&牽引能力」で検索すればトーイングキャパシティーとして目安となる数字が発表されていますが、鵜呑みにしないこと。「牽引できる車」と「牽引しても(比較的)大丈夫な車」は違います。
エンジンのパワーではなく「トルク」が重要
牽引時に時速120キロも出す必要はありませんし、そもそも国内では法律違反です(笑)馬力がある車は最高速が速くなりますが、トレキャンのヘッド車に最高速度が速い車は必要ありません。どちらかといえばトルクがあれば安心です。
発進時や坂道での加速などに余裕をもって対応するためには「低回転で発生する強いトルク」が必要と言われますが、これも目安程度に考えておきましょう。ちなみにトレイルブレイザーのスペックは「最高出力:295PS(6000rpm)、最大トルク:377Nm(4800rpm)」これだけあれば牽引時にストレスを感じることは少ないですが、強いトルクを発生させるにはかなり回転数を上げる必要があるという事です。実際にトレイルブレイザーはトレキャン牽引時の高速上り坂でもアクセルを踏めば加速しますが、回転数はかなり高めです。 もっと非力なエンジンの場合、長時間高回転を維持しなければいけないような登り坂ではオーバーヒートの心配も出て来ます。
そういった観点からすれば、1500~2500回転ぐらいで最大トルクを発生させるディーゼルエンジンの方が運転していて余裕を感じるかもしれませんね。
アメ車大好きなミックさんが目を付けた「国産車」たち
おまけの比較車としてエクストレイル(2000モデル)の スペックを上げておきます「最高出力:150PS、最大トルク:200Nm」
「なんでエクストレイル?」って思うでしょうが、じつはトレイルブレイザーの前に乗っていたから。エクストレイルでも750キロ(を、たぶん超えてた…)ボートをけん引してたので感覚的なレビューができます。
ぶっちゃけ750キロを動かすだけならガソリンエンジンでも2000㏄程度あれば大丈夫と思います。ですが忘れてはいけないのが、日本国内ではあくまでも「乗用車での牽引は自己責任」って事です。車が壊れようが事故を起こそうが、そもそも乗用車での牽引というシチュエーションは想定外なんです。
だからこそ経験値がものを言います。自分なら「エクストレイルで750キロのボートトレーラー」「トレイルブレイザーで750キロオーバーのボートトレーラーと750キロのキャンピングトレーラー」をけん引してきた経験があるので、次にヘッド車として選んだ車が何であろうと過去のヘッド車と比べて判断することができます。
エクストレイルにくらべてトルクがあれば運転に余裕がある反面、自車のパワーでフレームが歪まないように気を付けなければいけないと理解できますし
トレイルブレイザーほどのフレーム強度がなければ悪路での牽引は極力ゆっくり走ろうって対応できます。
また、車両重量についても前任2車種と比較してトレーラーとのバランスを考えると思います。
そんな中でミックさんのトレイルブレイザーが逝ってしまったとしたら…と具体的に考えたヘッド車(国産)をご紹介します。と言っても、2台だけですが(笑)
MAZDA CX-8
この車、牽引フェチにはありがたい、国産車で珍しくオプション装備にヒッチメンバーをラインナップしています!
メディアでサウザー450を牽引している画像を見て「やっと日本にも牽引文化が芽吹いてきたか!」と胸熱になったことを覚えています(笑)
牽引できることをしっかりアピールしてるんだから、当然スペックにも余裕を持たせてあるんでしょ?って理解してますが…
実際に自分で運転してみないとわからない「フィーリング」的な不安を払拭すべく、先日某ディーラーさんで試乗してきましたよ!
CX-8のカタログスペックから期待するのは低回転域のトルク。牽引に必要なのは最高速を引き出す強大な「馬力」ではなく、重たい車体をグイグイ引っ張る図太い「トルク」です。
アラフォーが普段乗りするにも違和感ない車種だと思います。
三菱アウトランダーPHEV
ちょっと話題に出しましたが、キャンプ場での電源確保という観点から「アリじゃね?」って思っている車種です。
信頼のソレックスからは適合ヒッチが販売されています。等級「C」なんで750キロまでは牽引可能。 カテゴリ的にはSUVなので、それなりの車体強度はあるんじゃないかと思います。
デザインは好みが分かれるところですが…ミックさん的には最近の三菱車はフロントマスクが「X」になってるのが多いからヤダ。人相学的な観点から言うと「顔がバツ」になってるのはいただけないですよね…
その他 牽引向きではないか?と思われる車種
後はお目汚しに…
- ランドクルーザー(TOYOTA)
- ランドクルーザープラド (TOYOTA)
- ハイラックス (TOYOTA)
ラダーフレーム採用3車種。しかし「ラダーフレームだから牽引余裕♪」とか、たぶんナイ。プラドとハイラックスにはディーゼルエンジン採用グレードがありますが、なんでココのディーゼルはこんなにウルサいの?って印象です。まぁ、最近のトヨタ車はフロントフェイスに品がないので試乗止まりで終わってます。
- FJクルーザー (TOYOTA)
こいつは生産中止…
- エクストレイル(日産)
- ムラーノ(日産)
まぁ、どちらもそれなりに。つか、ムラーノはまだ生産してましたっけ?ハリアーの対抗馬的なポジションだったので四駆としてのポテンシャルは期待してませんが、それなりの車重とパワートレインを持っていたと思うのでC等級ヒッチをつけたら牽引できそうです。
エクストレイルは初代モデルでけん引経験ありますが、某四駆専門店で「(牽引したら)ラゲッジルームから分離するかもしれんからやめとけ」とコメントをいただいたことがあります(笑)結局たいした不具合もなくお役目を果たしてくれましたが。現行モデルはアーバンユースな売り込み色が強くなったので牽引という行為が似合わない車かもしれないですね。
HONDAは…車外ヒッチで750キロを牽引できるものがほぼありません。あくまで私感ですが、ヒッチの強度が出せないのではなく車体、あるいは取付の強度が出せないのかな?と思っています。HONDA車にお乗りの方は牽引は遠慮していただいたほうがいいかも、っつーか、HONDA車はどれも牽引のイメージが湧いてこない…
- エスクード(スズキ)
かつてはコンパクトな車体ながらしっかりしたフレームを採用した「隠れ本格オフローダー」なイメージがありましたが、ここ最近走っている姿をあまり見かけなくなりましたね。現行でもC等級のヒッチが製造されているので、それなりにヘッド車してくれるんじゃないかと!…思っているのは個人的な希望的観測です。
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